第4回 ITSL INNOVATION FORUM2023/12/8更新
第4回 ITSL INNOVATION FORUM
スポーツコミュニティを通じて
Well-beingな企業
そして社会創出の実現に挑む
●挨拶
IT SPORTS LEAGUE理事長
株式会社SRAホールディングス 大熊 克美 氏
IT SPORTS LEAGUE理事長
株式会社SRAホールディングス代表取締役社長
大熊 克美 氏
2023年11月28日、「第4回 ITSL INNOVATION FORUM」が東京・虎ノ門ヒルズの日本ビジネスシステムズ株式会社16F本社会議室にて開催された。コロナ禍を挟み、4年ぶりの開催となった今回は『スポーツコミュニティを通じて Well-beingな企業 そして社会創出の実現に挑む』をテーマに、IT SPORTS LEAGUE (以下、ITSL)参加企業をはじめとする多くのIT業界関係者が参加した。
開会に先立ち、ITSL理事長で株式会社SRAホールディングス代表取締役社長の大熊克美氏から「近年、Well-beingという言葉をよく聞きますが、単刀直入に言うと、より良く生きるということです。SDGsや健康経営という言葉もありますが、とどのつまりは幸せに生きること。経営者の立場として、社員のみんなの健康にために何をすべきか、今日は私自身もしっかり勉強させていただきます」と挨拶があった。
●講演1SCSK株式会社 河辺 恵理 氏Well-being経営への挑戦
~SCSKの人的資本経営~
SCSK株式会社
執行役員 人事・総務部長
分掌役員補佐(D&I・Well-being推進部)
河辺 恵理 氏
2014年にSCSK株式会社で初の女性役員となり、現在は同社の人事・総務分掌役員補佐として「Well-being経営」を推進する河辺恵理氏から『Well-being経営への挑戦~SCSKの人的資本経営~』と題した講演が行われた。
SCSKはこれまでに「働き方改革」「健康経営」をはじめとした様々な人事策に取り組み、現在はIT業界共通の課題である「人的資本経営」と「Well-being経営」の2つを柱に、職場の環境改善を目指している。講演では、まず言葉の定義について触れられ、人的資本経営とは「従業員を企業の重要な資本とみなす経営手法」であり、Well-being経営とは「従業員の幸福感や満足度を重視し、組織全体のパフォーマンスや生産性を高める経営手法」と説明があった。
人材の価値を最大限に引き出す人的資本経営の重要度は年々高まっているが、その背景には海外機関投資家が人的資本情報を企業の成長材料として重視しているという事情がある。さらに2023年4月、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード改訂により人的資本情報の開示が義務化されたことで、人的資本経営はすべての上場企業にとって喫緊の課題となった。
その人的資本経営を実践するために欠かせないものが「Well-being経営」だと河辺氏は言う。SCSKは2011年の合併(住商情報システム株式会社と株式会社CSKが合併)を機に経営理念を新たにし、2012年から働き方改革に着手。当時、IT業界では休まない社員を「良い社員」とする風潮があり、「休みづらい、帰りづらい雰囲気があった」(河辺氏)。そこでSCSKは「高負荷労働の状況のままでは企業も、IT業界全体も発展しない」と抜本的な改革に乗り出し、同年から残業半減運動を開始、翌2013年から「スマートワークチャレンジ20」を導入した。
「スマートワークチャレンジ20」とは、社員一人ひとりの残業時間を月間平均20時間以内と規定し、全社員が年間有給休暇(20日)の全取得を目指すもの。この目標を実現するためにフレックスタイム制の拡大や裁量労働制を導入したことで働き方の柔軟性が高まり、河辺氏によると「傷病で休む人やメンタルダウンをする人がすごく減った」という。当時、社内では「残業をやめたら売り上げ利益が減るのではないか」という危惧もあったそうだが、業界全体の発展も相まって、「スマートワークチャレンジ20」導入後も売り上げ利益は増加しており、河辺氏は「働き方改革をしても業績を下げるバイアスにはならない」と胸を張る。
その後、SCSKでは2015年10月1日付で就業規則に「健康経営」の章を新設。社員一人ひとりの「健康リテラシー」を土台として、行動習慣の定着を図る「健康増進」や、早期発見・早期治療につなげる「健康管理」、治療と仕事を両立できる環境づくりとして「安心感・リスク対応」の施策を統合し、健康経営を持続的に推進している。2012年から導入された「健康わくわくマイレージ」というアプリは、健康維持・増進に向けた行動習慣と年1回受診の定期健康診断結果をポイント化するもので、当初はなかなか普及しなかったものの、目標達成者にボーナスを支給することで参加者が増えた事例を河辺氏は紹介し、「組織全体で社員の健康を後押しすることが重要」と力説した。
最後に、SCSKグループのWell-being経営が目指す姿について、河辺氏は「これまでは働き方改革、健康経営、ダイバーシティ、キャリア自律支援、組織開発の5つを柱にWell-being経営に取り組んできましたが、今年から『働きがいの追及』を追加しました。当社は社員、組織・チーム、会社が一体となりITの力で社会に対する価値創出を目指す会社なので、その中で社員一人ひとりが未来に向けた価値創出を目指し、それを実現することで働きがいを実感できると考えています」と今後の取り組みを紹介し、講演を締めくくった。
●講演2キリンビバレッジ株式会社 山本チャーリー周平 氏からだのコンディションを整える簡単エクササイズ
~肩こり・腰痛・眼精疲労解消!~
キリンビバレッジ株式会社
健康セミナー講師
山本チャーリー周平 氏
キリンビバレッジ株式会社は、大会スポンサーとしてITSLにオフィシャルドリンクを提供する日本有数の飲料メーカーだが、近年は健康経営全般に関わるサービスや健康に資する分野に事業を拡大している。その中の一つに健康経営トータル支援サービス「KIRIN naturals」があり、山本チャーリー周平氏は同サービスで講師を担当。本フォーラムでは、座学と実技を交えながら「からだのコンディションを整える簡単エクササイズ~肩こり・腰痛・眼精疲労解消!~」というテーマで講演が行われた。
IT業界はデスクワークが中心のため、「体を動かさないことで筋力が落ち、長時間同じ姿勢で座っていると体はどんどん硬くなる。そうすると血流や自律神経のバランスが悪くなり、体の状態だけではなくメンタル面のバランスも崩れてしまいます」と山本氏。特に近年はリモートワークの増加による運動不足が問題になっており、今回の講演では正しい姿勢の解説とともに、職場や自宅でできる簡単なエクササイズが紹介された。
フォーラム参加者はその場でエクササイズを実践し、最初に行った柔軟性のテストをエクササイズ終了後に繰り返すと、参加者はさっそく体の状態が改善されたことを実感。その後、眼精疲労の原因と対策の紹介があり、最後に山本氏は「健康を失うことで人生が大きく変わってしまう場合もあります。これを機に、自分の体を見つめ直して、たくさん動かして、そういう習慣を身につけてください」と呼びかけ、この日の講演は終了した。
●講演3株式会社SRAホールディングス 平磯 正之 氏IPI軟式野球リーグ31年間の軌跡
IT SPORTS LEAGUEへの参加意義
~Sportsを通じて得た「Well-being」~
株式会社SRAホールディングス
執行役員 総務部長
平磯 正之 氏
株式会社SRAホールディングスの執行役員・総務部長で、2009年からIPI軟式野球リーグ運営委員を務める平磯正之氏からは「IPI軟式野球リーグ31年間の軌跡 IT SPORTS LEAGUE参加意義~Sportsを通じて得たWell-being~」と題した講演が行われた。
SRAホールディングスの野球チーム「SRA Foresters」は、IPI軟式野球リーグが始まった1991年から現在に至るまで全大会に参加しており、同社の発展はITSLの歴史とともにあったと言える。IT業界の成長とともに、SRAホールディングスは独立系ソフトウェア会社としてのポジションを確立させ、ITSLもサッカー、テニス、バスケットボールなど種目を徐々に増やして規模を拡大。平磯氏は、IPI軟式野球リーグ第1回大会のパンフレットに「一般の方々にIT業界を理解していただくと同時に、第一線で働く精鋭たちが野球を通じて業界を発展させる」というチームの理念が書かれていたことを紹介し、「当社の創業者である丸森隆吾(故人)の思いは今も受け継がれている」と話した。
現在、SRA Forestersには第1回大会から出場するレジェンド選手がいる一方、チームの平均年齢は26歳と若く、「ここ数年は野球未経験者も多いが、彼らに対して監督、キャプテン、先輩部員が指導し、それが部員同士の交流を生んでいる」と平磯氏は語る。企業名(Software Research Associates)にもあるように、SRA Forestersは「Associates(仲間)」であることを大切にし、ITSLのスローガンを体現してきた。講演の最後に平磯氏は「ITSLは業界に携わる各社や、そこで働く社員の仲間づくりの場になることが設立の目的であり、それがスポーツを通じたWell-beingを実現していくものだと思っています」と、あらためてITSLへの参加意義を確認し、本フォーラムを締めくくった。